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7月4日に刻まれた教訓 ー 球磨川の豪雨と、私たちが備えるべきこと ー

2026/07/04

 多くの人にとって7月4日は、七夕を目前に控えた、夏の訪れを感じる一日かもしれません。
しかし防災の視点で振り返ると、近年の日本災害史で最も深刻な水害の一つが起きた日でもあります。

 今日という日をきっかけに、過去の教訓を一緒に振り返ってみましょう。

 2020年(令和2年)7月4日の早朝、熊本県を流れる球磨川の流域で、記録的な豪雨が発生しました。

 前日の7月3日夜から、南の海上から暖かく湿った空気が梅雨前線に流れ込み前線が活発化。日付が変わる1時間前には「線状降水帯」が形成され翌日4日10時頃まで停滞しました。
 同じ場所に非常に激しい雨が降り続き、球磨川流域では、わずか2日間で7月のひと月分に相当する観測史上1位の雨量を記録しました。

 そして、大量の雨が球磨川に流れ込み、川は氾濫。
 全国で死者84名、九州では熊本県を中心に死者65人、行方不明者2人。(災害関連死を含む)
住宅被害は7,300棟を超え、被害額は約5,222億円に上りました。
特別養護老人ホーム「千寿園」での痛ましい犠牲者も出るなど、多くの尊い命が失われる甚大な被害となりました。この豪雨災害を「令和2年7月豪雨」として政府は激甚災害指定しました。

 球磨川は「暴れ川」として知られ過去にも洪水が起きていましたが、この時は戦後最大とされた昭和40年7月洪水を上回る降雨量を観測。山間部に降った大量の雨がすり鉢状の人吉・球磨盆地に一気に流れ込んだことが大氾濫の要因となりました。 ※(注釈)

 この災害には、私たちが学ぶべき教訓が数多く残されています。

 一つ目は、「避難のタイミング」です。
 人吉市では7月4日午前5時15分に避難指示が出されましたが、浸水が本格化したのは日の出以降で、すでに逃げ遅れが生じていました。後の研究では、就寝前の早い段階で避難を呼びかける必要があった、と指摘されています。つまり、「雨がひどくなってから」では間に合わないことがある、ということです。夜間や早朝に川の氾濫が起こると、暗さと水の勢いで避難は極めて困難になります。
大雨の予報が出た時点で、避難を判断することこそが命を左右します。
特に、過去の氾濫記録がある河川の近くに住む住民は、大雨警報が出た段階での早期避難が重要です。

 二つ目は、「連絡手段」です。
 この災害では、電話がつながりにくい状況の中で、SNSを使った救助要請が実際に行われました。助けを求める投稿が救助にあたる人々の目に留まり、対応につながった例が報告されています。この経験は、災害時には電話だけに頼らず、SNSや災害用伝言サービスなど複数の連絡手段を持っておくことの重要性を、改めて私たちに教えてくれました。スマートフォンの充電やモバイルバッテリーの備えが大切なのも、こうした理由からです。

 そして、7月上旬という時期そのものにも注意が必要です。
 この時期は梅雨の末期にあたり、梅雨前線が停滞して、湿った空気が供給され続けやすくなります。近年ニュースで頻繁に耳にする「線状降水帯」は、まさにこうした条件で発生します。球磨川の豪雨も、この線状降水帯によるものでした。7月上旬は、一年のうちでも大雨への警戒を一段引き上げるべき時期だと言えます。

 最後に、今日からできる備えを3つ紹介します。

 一つ目は、連絡手段の確認です。
 モバイルバッテリーが充電されているか確認し、家族との間で電話以外の連絡方法(SNSのグループや災害用伝言ダイヤル171など)を決めておきましょう。

 二つ目は、避難のタイミングを前もって決めておくことです。
 「雨が強くなってから」ではなく、「大雨の予報が出た時点」で、どこへ・いつ避難するかを家族で話し合っておきましょう。

 三つ目は、自宅周辺のハザードマップの確認です。
 近くの川や斜面の危険度、避難場所と経路を、平常時の今のうちに確かめておきましょう。

 7月4日は、過去の悲しい記憶であると同時に、私たちの防災意識を見つめ直すための日でもあります。
この記事を読んだ今日、どれか一つでも備えを進めていただければと思います。

※注釈
「時間30mmを超える激しい雨が約8時間にわたって連続」国交省
「7/4午前0時ころより急激に増加、10分間10mm超の豪雨が三度断続的」防災科研
この線状降水帯は幅約70km、長さ約280kmの大規模なもので、2009年以降に九州で発生した線状降水帯の中で最も規模が大きく、持続時間も最長だったとの報告。
継続時間:報道系のまとめで「長さ約280kmの線状降水帯が13時間継続した」と掲載。


この記事には自治体の避難指示の判断タイミングなど、責任の所在についてあえて掲載しておりません。
理由は、防災の「防災の三本柱」である自助・共助・公助で災害対応を行う必要があるからです。
この自助・共助・公助の意義については、また後日コラムで掲載する予定です。

(本記事は、気象庁・国土交通省・防災科学技術研究所などの公表資料や報道に基づいて構成しています。)