防災コラム #情報

高速道路の逆走車に出会ったら——命を守る対処法

2026/07/20

 また、高速道路の逆走事故が起きてしまいました。(2026/07/20 逆走車と正面衝突:死亡事故)

 身も蓋もない話から始めます。
高速道路の逆走車に巻き込まれたくなかったら、高速道路を使わなければ遭わない。
逆走のほとんどが、高速道路で起きる事案です。なので、乗らなければ遭遇しません。

 でも、それで話を終わらせるわけにはいきません。
仕事で使う人、帰省で使う人、旅行で使う人がいます。また、地方では、高速道路を使わないと現実的に生活が成り立たないのです。

「使わない」という選択ができない人のために、この記事を書きます。

 自分がどれだけ安全運転をしていても、逆走者は向こうから突っ込んできます。
こちらに落ち度がなくても巻き込まれるのです。だからこそ、「情報を知ったときに、どうするか」を、事前に知っておくことが必要です。

2.逆走事故は「稀だが、桁違いに危険」

まず、実態を数字で押さえておきます。

 逆走事故そのものは、件数だけ見れば多くありません。
事故に至った逆走は年40件程度で、2024年は50件でした。高速道路の事故全体からすれば、ごくわずかです。
2025年度の事故件数は9,540件(1日平均約26件)で、2024年度より245件(2.6%)増加しました。

 問題は、その一件あたりの深刻さです。逆走事故が死亡事故になる割合は、高速道路の事故全体と比べて約38倍にのぼります。死傷事故になる割合でも約4倍です。理由は単純で、逆走は正面衝突になるからです。時速100kmどうしが正面からぶつかれば、相対速度は時速200kmになり、。生存は極めて難しくなります。

ここが最も大事な点です。
運動エネルギーは、速度の「2乗」に比例します。
速度が2倍になると、エネルギーは2倍ではなく4倍になります。

時速100kmでの衝突を「1」とすると
時速200kmでの衝突は「4」
同じ壁にぶつかるにしても、100kmと200kmでは、体にかかる破壊力が4倍違います。

つまり逆走は、「めったに起きないが、起きたら命に関わる」という非常に危険な種類の事案なのです。
「確率が低いから備えない」と高を括るっていると、遭遇した一回で取り返しがつかなくなります。

2.誰が逆走するのか——他人事ではない理由

逆走する車の運転者について、意外な事実があります。

 2024年の逆走事故の年齢構成を見ると、65歳以上が約半数を占め、うち75歳以上が34%でした。高齢ドライバーが多いのは事実です。ただし、30歳未満も14%、30〜65歳未満が30%を占めており、若い世代・現役世代も相当数が逆走しています。「高齢者だけの問題」ではありません。

 動機の内訳も重要です。逆走の動機は、故意が約2割、過失(間違えて逆走した)が約4割、そして認識なし(逆走していることに最後まで気づいていない、認知症などのケース)が約3割です。

 このデータで分かるように、逆走車の多くは「わざと」ではなく「間違えて」または「気づかずに」走っているということがわかります。つまり相手は、こちらがパッシングやクラクションで警告しても、状況を理解できないのです。過失や認識が無いドライバーに「あなたは逆走している」と一瞬で伝えるのは、現実には困難なのです。
だから、警告して止めさせようとするより、まず自分が逃げることが最優先なのです。

3.逆走車を「見かけた」ときの対処法

前方から逆走車が近づいてくる、あるいは逆走車がいるという情報を得たとき。パニックにならず、次の順で動きます。

①速度を落とし、いちばん左の車線に移る

 逆走車は、こちらの追い越し車線(いちばん右の車線)を向かってくる傾向があります。逆走車のドライバーは、自分では正しく走っているつもりで「自分から見て左側」を走ろうとしますが、それが正しい方向に走っているこちらから見ると、右側の追い越し車線にあたるためです。だからこちらは、左の走行車線に寄ることで、正面衝突の可能性を下げられます。急ハンドルは禁物です。周囲の車を確認しながら、落ち着いて左へ寄ります。

②減速する。急がない

速度が落ちれば、衝突したときの被害も、回避の余地も変わります。ただし高速道路上での急ブレーキは追突を招くので、後続車に注意しながら、じわりと速度を落とします。

③状況によっては、安全な場所に一時退避する

すぐ先にサービスエリアやパーキングエリアの入口があれば、そこに入って逆走車をやり過ごすのも有効です。ただし、退避のために無理な車線変更をするのは本末転倒です。安全に入れる場合に限ります。

④同乗者がいれば「#9910」へ通報

 道路の異常を知らせる緊急ダイヤルが「#9910」です。逆走車を見たら、同乗者から通報してもらいます。ここで大切なのは、運転者は運転に集中すること。運転中のドライバー自身がスマホを操作するのは、それ自体が新たな事故のもとです。一人で運転している場合は、無理に通報しようとせず、安全な場所に停まってからにします。

4.「自分が」逆走してしまったと気づいたら

 逆走は、される側だけの話ではありません。IC(インターチェンジ)やJCT(ジャンクション)の構造は複雑で、誰でも進入口を間違える可能性があります。逆走事案の約半数は、ICやJCTで逆走が始まっています。

もし走行中に「あれ、対向車がこっちに来る」「標識が逆向きだ」と気づいたら——

まず、ハザードランプを点灯し、速度を落として、できるだけ左(=逆走している自分から見て左、本来の路肩側)に寄せて停まります。そして、車を降りてガードレールの外など安全な場所に避難し、#9910または110番に通報しましょう。

 絶対にやってはいけないのが、その場でUターンして向きを直そうとすることです。方向転換の動作中に、正しい方向に走ってきた車と衝突します。「間違えた、直そう」という自然な判断が、いちばん危険な行動になります。
止まって、降りて、逃げて、通報する。この順番です。

あと、「追い越し車線を高速で走り続けない」というのも一つの回避策です。
制限速度を守って、キープレフトで左側走行をしていれば、回避できる確率は格段に上がります。

5.いちばん確実な備えは「情報」

最後に、根本的な話に戻ります。

 逆走車との遭遇は、こちらの努力だけでは完全には防げません。それでも、リスクを下げる備えはあります。

 高速道路に入る前や運転中、道路交通情報(ラジオ、カーナビのVICS、高速道路会社の情報)に注意を払っておくこと。逆走車が発生すると、これらの経路で「○○方面で逆走車あり」と情報が流れることがあります。事前に知っていれば、心の準備も、車線選びも変わります。

 そして冒頭に戻りますが——その区間、その時間帯に、本当に高速道路を使う必要があるか。急がない旅なら、一般道という選択肢もあります。逆走に限らず、高速道路は事故が起きたときの被害が大きい場所です。「使わない」もまた、立派なリスクマネジメントの一つです。

使うと決めたなら、備える。

使わずに済むなら、それでいい。

どちらも、身を守るための正しい判断です。

*この記事は、国土交通省および高速道路会社(NEXCO)が公表する逆走の発生状況・対策情報に基づいて作成しています。統計数値は「警察の協力を得て国土交通省・高速道路会社が作成」した資料(2015〜2024年のデータ)によります。逆走車を発見した際や自ら逆走に気づいた際は、道路緊急ダイヤル#9910、または110番へ通報してください。

出典
NEXCO東日本
https://www.e-nexco.co.jp/activity/reverse/status.html
国土交通省 道路局
https://www.mlit.go.jp/road/
緊急時の連絡先(全国共通)
#9910